「 敵対的買収 」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。2005年にフジテレビがライブドアに買収を仕掛けられた、敵対的買収は有名な話と言えるでしょう。 一般的には、敵対的買収は上場企業が対象となりますので、中小企業において譲渡制限を設けている会社が多く、敵対的買収になるケースはほとんどないと言われています。 今回は、敵対的買収されやすい会社の特徴、敵対的買収の対策について書いていきます。ぜひ最後まで読んでみてください。 1、そもそも敵対的買収とは?
日本では、言うまでもなく少子高齢化と人口減少が進行している。「少産」である以上、国の規模が縮小することは避けられない。その意味で、国内需要はいずれ限界を迎えることになるだろう。 この状況を鑑みると、買収戦略はアジアをはじめとするグローバル・マーケットを取り込むことを念頭に置いて計画すべきだろう。敵対的買収を含む経営資源の獲得競争は、すでにトランス・ナショナルな規模で始まっている。日本経済が再び世界で存在感を示すためには、AIをはじめとする新技術が生み出す産業の萌芽を決して見落としてはならない。 >>M&Aについてもっと知りたい方はこちらの記事もおすすめ M&Aとは?中小企業が実施するメリット・デメリット、流れや事例を総まとめ 文・THE OWNER編集部
株式公開買付とは、通称 「TOB(Take Over Bit)」 と呼ばれる企業買収方法である。証券取引所などの市場を介さずに、期間・株数・価格をあらかじめ公開して、不特定多数の株主から株式を買い付けるものだ。 株式公開買付には、「友好的買収」と「敵対的買収」がある。敵対的買収には「会社が乗っ取られる」といったネガティブなイメージがあるが、法的に認められている合理的な買収方法の1つだ。 日本では事例こそ少ないが、国内需要の限界が指摘される今日、グローバル・マーケットでの生存競争で勝ち残る手段として、敵対的買収は一考に値する。また、ライバル企業から敵対的買収を仕掛けられた場合は、適切な防衛策を講じなければならない。 この記事では、敵対的TOBの基礎について説明した上で、メリット・デメリットをわかりやすく解説し、いくつかの防護策も紹介する。 敵対的買収とは? 敵対的買収とは、買収対象となる企業の経営陣や筆頭株主の合意を事前に得ることなく、株式公開買付を実施することをいう。当事者たちを無視して半ば強引に企業を買収するため、ネガティブなイメージを持たれやすい。しかし、敵対的買収は法制度によって保護された合理的な経営戦略の1つであり、過剰な拒否反応はかえって冷静な経営判断を阻害する要因にもなり得る。 友好的買収とは、対象企業の経営陣から事前に了承を得ている株式公開買付のことだ。国内の株式公開買付は、圧倒的に友好的買収が多い。最近では、ヤフー株式会社が株式会社ZOZOに対する株式公開買付を実施したことが話題になった。記者会見の内容からもわかるとおり、これは両社が保有する経営資源のシナジー効果を見込んだ友好的買収と言える。 >>敵対的買収についてもっと知りたい方はこちら 敵対的買収のメリットとデメリット 敵対的買収を経営戦略の手段として検討するにあたって、メリットとデメリットを理解しておく必要がある。敵対的買収に対して「倫理違反」というレッテルを貼るのではなく、「何が本質なのか」を冷静に見極めなければならない。このスタンスは、防衛策を講じる上でも極めて重要になる。相手企業が何を考えているのか、その一歩先を読み解くためには、敵対的買収が持つ価値を知る必要がある。 敵対的買収のメリット 敵対的買収のメリットは、大きく3つある。 1.
買収企業が買収対象企業を実質的に支配することなどを目的として、当事者の合意を得ないまま、買収対象企業の株式の多くを買い集めることをいいます。詳しくは こちら をご覧ください。 敵対的買収で株価はどうなる? 買収企業と買収対象企業の株価について、まず買収企業の株価は上がることが多いです。詳しくは こちら をご覧ください。 敵対的買収のメリットは? 「企業規模の拡大」や「シナジー効果による経営効率化」、「経営資源の入手」が挙げられます。詳しくは こちら をご覧ください。 ※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。 バックオフィスを効率化して経営をラクにするなら 会計・経理業務に関するお役立ち情報をマネーフォワード クラウド会計が提供します。 取引入力と仕訳の作業時間を削減、中小企業・法人の帳簿作成や決算書を自動化できる会計ソフトならマネーフォワード クラウド会計。経営者から経理担当者まで、会計業務にかかわる全ての人の強い味方です。
組織変革を速やかに実行できる 企業の平均寿命は、四半世紀に満たないという。AIをはじめとする新技術は産業構造を大きく変え、飛躍的に発展させることになるだろう。特に、人間の情報処理速度を上回る解析技術とインターネットの通信速度が向上することで新規産業が誕生しやすくなれば、市場の流動性は自ずと高まる。 このような潮流の中で、組織変革は企業の生命線を握る最重要課題と言えるだろう。現実の組織は、規模が大きくなるほど、内部コミュニケーションが複雑化して決断が遅くなる傾向がある。長年培われてきた組織文化を一新することは、容易ではない。 しかし、敵対的買収が成功すれば、買い手は売り手の経営陣を刷新できる。業績不振の原因がトップ層の時代遅れにあるなら、意思決定の主体が一新されることでV字回復する可能性がある。これは、既存の株主にとっても歓迎すべきことだろう。 3. 会社の在り方を株主全体に問う機会が生まれる 敵対的買収では、株式の買付額を市場価格より高く設定するのが通例だ。株主にとっては、保有株式を高値で売却する機会を得ることになる。株式を保有し続けるのか、それとも売って利益を得るのか。この判断には、株主の価値観が反映される。 敵対的買収において、株主が「株を売る」という行為は利益を獲得するだけでなく、敵対的買収に対する同意の意味も含まれるのだ。敵対的買収は、株主全体に会社の在り方を問うことにもなるのだ。 敵対的買収のデメリット 敵対的買収のデメリットは、以下の3点に集約される。 1. 友好的買収に比べて成功確率が低い 友好的買収は事前に経営陣の合意を得ているため、買収にあたって協力体制が構築しやすい。一方敵対的買収は、売り手から何らかの防衛策が講じられる可能性が高いため、成功確率が低くなる。そのため、潤沢な資金力だけでなく、内部の協力者を確保することが重要になるだろう。 2. 従業員が大量に退職するリスクがある 敵対的買収は、売り手企業で働く従業員に以下のような不安を与える。 ・労働環境が悪化するのではないか? ・給与や待遇が悪くなるのではないか? ・外部の人間が参入して出世できなくなるのではないか? このような不安は、従業員に転職を検討させる要因になる。また、売り手側の経営陣がネガティブ・キャンペーンを実施する可能性が高いため、敵対的買収が成功したとしても、多くの従業員が退職するリスクがある。属人性の高い事業であればノウハウも流出してしまうため、大きな打撃となるだろう。 3.
風評被害が発生する 敵対的買収は、ネガティブな心象を抱かれやすい。資本力で強引に買収を実行するといったイメージがマスメディアを通じて世間に広がると、買い手側の業績に悪影響を及ぼしかねない。 このようなリスクを抑えるためには、「風評被害が発生する前に説明責任を果たす」といった先手必勝のメディア戦略を講じる必要がある。 知らなきゃ損!敵対的買収の防衛策 敵対的買収を経営戦略の一環として検討するだけでなく、自社が敵対的買収を仕掛けられた際の防衛策も、リスクマネジメントとして検討しておかなければならない。ここでは、敵対的買収が始まる前後に講じるべき防護策について紹介する。 敵対的買収が始まる前に講じるべき3つの防衛策 1. ライツプラン ライツプランは 「ポイズンピル」 とも呼ばれ、一定の株主権利を得た買収者が現れた場合に備えて、その他の株主に市場価格より安く株式を取得できる権利を事前に与えて、買収者の持株比率を引き下げるものだ。これは、配当金の負担や償還義務などがないため、買収前に実行すべき有効な防衛策と言える。 2. ゴールデン・パラシュート ゴールデン・パラシュートとは、買い手が売り手の経営陣を解雇した際に、莫大な退職金を支払う契約を締結して買収時の企業価値を引き下げる防衛策である。敵対的買収では売り手の経営陣が一新される可能性が高いので、防衛策として一定の効果を期待できる。 3. プット・オプション プット・オプションとは、金融機関から資金を調達する際に、「支配権が変更された場合、一括弁済を請求できる」といった条項を契約に入れることで、買収後に財務状況を悪化させることを狙うものである。 >>ポイズンピルについてもっと知りたい方はこちら 敵対的買収が始まった後に講じるべき3つの防衛策 1. ホワイトナイト ホワイトナイトとは、売り手と協力関係にある第三者が、敵対的買収を実行した企業よりも有利な条件で株式公開買付を実施することをいう。 2. 焦土作戦 焦土作戦とは、敵対的買収を実行した企業に利益をもたらす事業や資産を売却したり、複数の金融機関から多額の負債を引き受けたりすることによって、買収後の経営リスクを高める防衛策だ。「クラウンジュエル」とも呼ばれる。 3. 増配 既存株主への配当金を増やして、財務上の負担を大きくする防衛策だ。 国内需要の限界を見据えた買収戦略を!
用語集 資本政策・敵対的買収 既存株主との調整、敵対的買収への対処など、支配権のコントロールに関わる用語をまとめました。 敵対的買収 (てきたいてきばいしゅう / Hostile Takeover) 敵対的買収とは、買収の対象となった会社の経営陣の意に沿わない買収者が、経営陣の意向に逆らって、対象会社の株式を市場で買い集めたり、 TOB を実施して対象会社の株式を買い付けることにより、対象会社の経営権を取得することを意味する。 反対に、対象会社の経営陣の同意のもとに行われる買収を 友好的買収 という。
敵対的買収されないように、対策の導入を検討されている会社が増えているものの、実は株主の反対により、対策が立てられない会社も少なくありません。 なぜならば、 利益を重視する株主からすれば、より利益が増えるのであれば、経営陣が変わっても構わない からです。 つまり、 敵対的買収の防衛策を立てるには、株主とよい関係を築き、同意をもらうことが非常に重要 と言えるのです。 お問合せフォーム まとめ 今回は敵対的買収について書きましたが、参考になりましたでしょうか。 中小企業にはあまりないとは言え、これからIPO(上場)を検討されている中小企業は、ぜひ今のうちから対策を立てておきましょう。